2007年1月30日、当時無職で暇を持て余していた俺は、嫁を仕事に送り出すとそそくさと車に乗り込み、一路西を目指して走り出した。戦国時代に興味のない嫁を伴わず、一人で自由気ままに好きなだけ史跡を見てまわる旅。なんという開放感。平日昼間に自由に遊びまわれる優越感に浸りながら、向かったのは関ヶ原。普段は通過するばかりであったが、今日ばかりは時間の許す限り史跡を見て回ろうと心に決めた。
関ヶ原までは自宅から約1時間ほど。まず関ヶ原に着いて向かったのは関ヶ原町歴史民族資料館。中に入ると豊富な関ヶ原合戦の資料が展示されている。冬の平日の午後、俺のほかに客は爺さんが2人ほどいただけで、おかげでじっくりと堪能することができた。当日は「戦場で生まれた科学」という企画展をやっていて、戦国時代の医療器具などが展示されていた。ひととおり見終わり、出口付近には土産物コーナーを発見。ここは土産物も豊富である。地酒、武将家紋入りTシャツ、家紋入りぐい呑みや千社札などなかなかの品揃え。そこで俺が特に興味を引かれて購入したのが、関ヶ原合戦屏風ミニチュア。高さ20センチほどの屏風だが、つくりはしっかりしていてなかなかの出来栄えである。問題は家に飾る場所があるかどうか、だ。あとは嫁用にせんべいを買って資料館を出た。
戦利品の屏風ミニチュア。 現在設置場所を思案中。 |
資料館を出ると、目の前の公園には陣場野とも呼ばれる徳川家康最後陣跡がある。文字通り、関ヶ原合戦終盤に家康が本陣を据えた場所。かなり三成の陣に近い印象を受けたが、ここでは合戦後に家康が首実検をした場所としても知られている。現在は、その首実検の様子を描いた看板が石碑の近くに立っていたが、非常に静かな公園だった。
次に、資料館でもらった地図を頼りに決戦地へと向かう。陣場野から決戦地へは、住宅地を抜けて田んぼの中の細い真っ直ぐな道を進む。農地に囲まれた一角に各武将の幟とともに石碑が立っている。これが決戦地の碑。まさに三成が陣を敷いた笹尾山の麓という位置で、距離も三成陣から目と鼻の先である。そこから更に進むと笹尾山入口。決戦地からは車で1分もかからない。そこから矢来の間を抜けながら登山道を登ること数分、笹尾山の上の三成陣跡に着いた。そこからは東南に広がる関ヶ原の盆地が見渡せた。
決戦地と笹尾山。 右が決戦地の碑で、左の小高い森が笹尾山。山頂には三成陣跡がある。この2箇所の距離は直線で数百メートルといったところか。 |
決戦地より南を望む。 正面の山と山の間の伊勢街道を島津隊は前退していった。 |
とりあえずこの日の関ヶ原探索はここまでとし、次はかねがね気になっていた、お隣垂井町にある菩提山を探すことにする。菩提山は豊臣秀吉の軍師として名高い竹中半兵衛重治の居城である。ここへ来る国道沿いにも「竹中半兵衛のふるさと」などという看板を目にしていたので、ぜひとも訪れてみたかった場所だ。
関ヶ原から国道21号関ヶ原バイパスを東へ向かうとすぐに垂井町。地図と勘を頼りに住宅地を抜け田んぼの真ん中の道を進むと、普通乗用車一台がやっと通れる幅の踏切を越えて山を登り始める。山腹で白山神社を通り過ぎると菩提寺を発見。その名の通り、菩提山の麓の寺であるが、どうやら菩提山の上り口は先ほどの白山神社付近であると狙いをつけてUターン。白山神社入り口に車を止めてみると、見事に菩提山登山口を発見。さて城跡はどこだと看板をよく見ると、思わずがっくりしたくなるような説明書きが。
菩提山登山道
この登山道を登ると約20分ほどで第一の鉄塔に到達する。
そこからさらに登っていくと第二の鉄塔が現れる。(約20分)
そこの分かれ道を真っ直ぐ上に登れば20分ほどで頂上に着く。
どうやら1時間みっちり登山しなければならないらしい。さすが半兵衛、そう簡単には城にはたどり着かせてはくれぬのか、などと思いながら時計を見る。時刻は午後4時。いまから往復2時間の山道を真冬に一人で行くのは無理だと判断し、断念。きっと暖かくなったらまた来るからね、誰かと!
気を取り直して山を下り、垂井町内を散策。役場のそばに竹中氏陣屋跡を発見。石垣、堀と門が残されていて、中は幼稚園になっていた。毎日この櫓門をくぐって幼稚園に通うとは、なんともうらやましい園児たちである。
竹中氏陣屋跡の櫓門。 石垣に登ることも可能。 |
陣屋跡から真っ直ぐ北へ向かい、鉄道の高架をくぐるとすぐ右手に禅幢寺がある。ここは竹中氏一族の菩提寺であり、竹中半兵衛のお墓があるというので行ってみた。本堂前でお参りをすると、本堂脇から奥の墓地へと行くことができる。その墓地を恐る恐る散策すると、山手側奥に小さく竹中半兵衛の墓と書かれた一角を発見。そこには古びた小さな祠があり、それが半兵衛の墓だという。感慨に耽りながら合掌してきた。
禅幢寺。 昨冬の大雪で本堂の屋根が被害を受けたらしいが、既に修復されてきれいになっていた。 |
半兵衛の墓に参った時点で時刻は五時を回ろうとしていた。すっかり日も傾き、あたりは薄暗くなり始めていた。山の夕暮れは早い。ぷらり旅初日は、思いつきで出発した割にはなかなか成果があって楽しい道程だった。どうやらこの楽しさにはまってしまいそうだ。まだ無職の俺には時間がある。また調べてぷらりとしようと心に誓いつつ、自宅に向けて走り始めた。
余談
嫁が帰宅後、今日は何をしていたか問われたので今日一日の紀行を大雑把に話したら、半ば呆れ気味に笑われた。土産の屏風を見せたら、同じく戦国好きの義兄に献上したらどうかと言われた。滅相もない、献上するならまた買いに行くわい!
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